「初期刀はこの5振りです。どれか1振り選んで下さい。」
こんのすけとか言う、神の化身だろうか?
狐に言われた。
見た目・・・は皆さんお綺麗で。流石付喪神。
肝心なのはどういう刀なのかと言う事。
スマホで調べてみる。
あ、良かった電波は通じる。
あ、歌仙兼定は縁があるみたい・・・。
「歌仙兼定にします。」
「分かりました。それではNo.四十二には歌仙兼定を。」
歌仙兼定と言う、刀の付喪神が私の傍に来た。
「僕は歌仙兼定。風流を愛する名刀さ。どうぞよろしく」
「よろしく。私は貴方と縁のある者です。」
2人笑顔で握手をする。
「では君、用意は出来たかい?」
「なんの?」
「今から生き残る為の用意さ。」
「え?」
その時、明かりが全部消えてしまい真っ暗になる。
「なに?」
「皆様に説明させて頂きます。」
あの狐の声だ。
「皆様が審神者になるには、刀剣と言えども生身の肉体を持った時間遡行軍を殺さなければいけません。
又、皆様が選んだ初期刀や鍛刀にて本丸に来る刀剣達を時には傷付けたりする事になります。」
「なので、刀剣達の気持ちをよりよく理解する優秀な主になる為に、バーチャルですが殺し合いをして頂きます。」
いつの間にか周りに人が居たみたいで、ざわつく。
「大丈夫です。何があっても死ぬ事はありませんが、現実と同じく痛みは伴います。
さぁ、審神者候補生の皆さん殺しあって下さい。」
電気が一斉に灯る。
「先手必勝だね。」
私が選んだ初期刀、歌仙兼定はすぐ横にいた男性を袈裟斬りにしていた。
「うわぁあああ!痛い!痛いぃいぃいいいい!」
その審神者候補を庇おうとする初期刀の1振り。
山姥切国広とか言う刀は歌仙の刀を受けて流してその反動で歌仙に切りかかる。
「危ない!」
咄嗟に山姥切に体当たりする。
私が攻撃して来ないと思ってたのか、油断したみたいでよろける。
歌仙は山姥切の刀の横を柄で叩きつける。
パキン。
そう音がしたと思ったら、山姥切国広の身体と顔にヒビが入って崩れ落ちた。
「ひぃ!」
「後は。」歌仙は当然のようにその主の元へ行き、私を呼ぶ。
近づくと日本刀を渡された。
「審神者になる主は、主自身がトドメを刺さないといけないんだよ?」
私が・・・、今までに起きた光景を見てるだけでも吐き気をもよおしてるのに?
トドメ・・・「無理、だよ。」
「そうなると、審神者失格者として僕に殺されるんだけど。死にたくは無いだろう?」
「殺さなければ・・・コロさレる。」死にたくはない。
痛い思いも嫌だ。
カタカタ震える手で刀を力の限り振り下ろし、男性の顔を真っ二つにした。

そういうやり取りは、殺し合いを開始した時点であちこちで始まって居たようだが、周りを見る余裕はない。
「かせ、ん。吐きそう。」
「それはいけないね。じゃあすぐにここから避難しようか。」
歌仙は私を横抱きにして、皆から遠く離れた場所に連れて行ってくれた。

連れて行かれた場所はトイレでは無く、庭かどこかだった。
胃の中が全部逆流する。吐く物が無くなっても吐き続けた。
切りつけた感触。人間の中身。思い出すと又吐き気をもよおす。
落ち着くまで時間がかかったが、とりあえず今の状況を把握しなければ。
「歌仙?」
「なんだい?」
「私達は審神者では無く、審神者候補だと言っていたけれど。」
「そうだよ。」
「審神者候補で殺し合いを必ずしないと審神者にはなれないの?」
「そうだね。少し前からそういう風に変わってしまったね。」
「その前は違ったの?」
「審神者の中には、僕達刀剣が破壊されても何も感じずにそれでも刀剣破壊を繰り返す人間が増えてきてね。」
「それで、僕達が傷ついた痛み。敵を殺す覚悟を知ってもらう為にこういうシステムを試してみる事になったんだよ。」
「刀剣破壊を繰り返す・・・それは確かに酷いけど。」
「平和な世界でぬくぬく生きてきた私達に、人を殺すこと、殺される事を知れって言うこと?」
その時、鈍い光が一瞬煌めいた。
「おっと!」
歌仙が刀を受け止める。
「奇襲したつもりかい?それはどちらかと言うと加州清光の方が向いていると思うけどね?」
「ちっ。」
そちらを向くとキラキラした鎧を身にまとった刀剣がいた。
確か、蜂須賀虎徹だった様な気がする。
歌仙が蜂須賀と剣技を交わす。
油断だった。思わず見とれてしまっていた。すると、
「ばーか、死んじゃえ!!」
後ろに気配がして殺気を感じる。思わず身を逸らすと、振り下ろした岩が腕に当たる。
「っーー!!」
腕は折れたと思うけど、今はそんな場合では無い。
低く構えて体当たりをする。
岩が落ちた。痛いのを我慢してその岩を拾い、少女の頭目がけて振り下ろした。
「はちす、か・・・」
少女が渾身の力を絞って初期刀を、呼び戻すが歌仙が応戦中なので主の元へは戻れない。
殺さなければ殺される。私がトドメを刺さないと、私が歌仙に殺される。
でもー
「たす、けて。お願い、何でもするから!
お願いお願いお願いお願い助けて、助けてたすけ」
私は岩を捨てた。
「ありがー」少女は涙を浮かべ絶望を知る。
より大きい岩を拾い、少女頭部目がけて投げつけられる。完全に頭は潰れ、目玉が足元に転がってくる。
それを踏み潰した。大きいイクラの様な感触で気持ち悪いが、生き残る為にどんな事でもする覚悟が決まった。
「蜂須賀虎徹!」
「何だろうか?」
多少暗い顔をしているが、彼も壊されたくはない筈だ。
「貴方の主は死んだ。今から私の所持刀になりなさい。」
「ふふっ、どうも僕の主は情け深いと言うより抜け目が無いみたいだねぇ。」
蜂須賀は屈辱的な表情をしていたが、決断をしたかのように顔を上げて
「分かった。」
と言った。

「あの場には六十名近く居たと思う。だが最初の殺し合いでかなり減っているはずだ。」
「蜂須賀、ありがとう。各刀の性格とかあるの?」
「そうだね。陸奥守吉行は割と大らかな性格だね。加州清光は新撰組の刀だから打ち合いにはならないだろう。突きで狙って来るだろう。山姥切国広は真面目故制し易いとは思うけどね。」
「そう、じゃあ加州と陸奥守が手を組んだとしたら。」
「ちょっと厄介かも知れないね。」
「褒めて貰っちゃあ、照れちゃうね!」
私の額目がけて突きが飛んできた。
一瞬!
その間に蜂須賀が刀を払う。が、軌道はズレて蜂須賀の肩を貫く。
「蜂須賀!」
「俺の事はどうでもいい、銃弾に気を付けろ!!」
蜂須賀の忠告と同時にこめかみに銃弾がかする。
すんでの所で歌仙が腕を引っ張ってくれたのだ。
「主は隠れて!!」
「分かった!」
まさか本当に歌仙の言っていた2振りが手を組んでいたとは。
「はい、そこまで!」
刀を持った女性があらわれる。
「油断した?陸奥守から、刀だけ借りたんだよね。」
なんで、なんで!!
「貴女の初期刀と所持刀は貰ってあげる。じゃあね、お間抜けさん。」
一か八かで足払いをかける。
「え?」引っかかってくれた、刀を奪い取ろうとするが向こうも握る手に力を入れる。
このままじゃ体力勝負になる。が、蜂須賀は負傷してるし陸奥守には銃がある。
圧倒的にこっちが劣勢だ!
絶対に死ぬもんか!
刀傷を負うのを覚悟して、相手の手に噛み付く。
絶対に、絶対に私は負けない!!!
手の甲の肉を噛みちぎる。
「いやぁあああ、痛い痛い!!何をする、」
ほざいている暇なんて無いのに愚かな女。
奪い取った刀、陸奥守で女の喉を突き刺した。
「又所持刀増えちゃったね。これで負ける事なんて無いでしょ?」
「うふふ、うふふふふ!」

その後は簡単だった。
もう戸惑いも、常識も何も無い。
私が最後まで生き残る為だったら何でもしてやる!
バーチャルだとしても、死ぬ程の痛みになんて耐える気も無い。
4振りを従えた私は最強だった。
「これで最後の一人ね。」
歌仙の刀剣で心臓を貫く。
「さぁ、全て終わったみたいだからモニタールームに帰ろう。」
「主、お疲れ様。」
生き残った事をもっと褒め称えてくれると思ったが、どの刀剣も静かだった。
部屋へ向かう最中も静まり返ったままだ。
でも、生き残った事を何より誇らしく思えて、私はささいな違和感に気づかなかった。
部屋に足を踏み入れる。
「おめでとうございます!」
甲高い声で祝福される。
「貴女が最後の審神者候補となりました。」
「皆殺したわ。傷も負った。これがあなた達の目的なんでしょ?だったら私を」
特別な審神者にして欲しい。そう言おうとした時、胸に鋭い痛みが走る。
「主、ごめんね。この審査は命のやり取りをする状況でも、如何に正気を保ってられるか?
それが1番の基準だったんだ。」
「そうです。貴女は狂気に走ってしまった。命の大切さを見失った人間は審神者には向きません。
なので、死んで頂きます。」
疑問を口にしようとするが、口から血がゴフゴフ溢れてきて言葉にならない。
「それと、最初にバーチャルだと説明しましたがあれは嘘です。貴女が殺した人達の分だけ報いを受けて下さい。」
待って・・・そんな。
「一時だけだったけど、主であるあなたが苦しまないようにー」
そうして、4振りの刀が私の身体を貫き息途絶えた。

「やっぱり、このシステムに問題があるんじゃないかな?」
「確かに。皆狂気に走りすぎぜよ。」
「でも、こうでもしないとその人間の本質は見極められませんからね。」
「こんのすけ、今日生まれた主は何人だった?」
「今日は3人でした。」
「僕を初期刀として扱ってくれる主はどこにいるんだろうね・・・」
「気長に待つしか無いだろう。」
「そうだね。」

「初期刀はこの5振りです。どれか1振り選んで下さい。」
「歌仙にします!5振り共調べて、歌仙だと決めてたんです!」
「僕は歌仙兼定。風流を愛する名刀さ。どうぞよろしく」
「よろしく歌仙、立派な主になれるように頑張るね!」
「あぁ、そうだね。立派な主になってくれるのを楽しみにしてるよ。」
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